子どもの貧困対策の推進に関する法律の改正に向けた提言の紹介とコメント

子どもの貧困対策の推進に関する法律の改正に向けた提言の紹介とコメント

こんにちは。
稲田遼太です。
所属する公益財団法人あすのばが、他の団体と共同して、提言を行いました。
今回はこちらをご紹介したいと思います。
※ 本投稿は個人で行ったものです。私の所属団体の提言についてのコメントではありますが、所属団体の意見を代弁するものではありません。

はじめに

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を知っていますでしょうか。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC1000000064_20230401_504AC1000000077

子どもの貧困対策の推進に関する法律は、その目的を以下のようにうたっています。

この法律は、
子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、
 全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、
 及びその教育の機会均等が保障され、
子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、

子どもの貧困の解消に向けて、
児童の権利に関する条約の精神にのっとり、
子どもの貧困対策に関し、
 基本理念を定め、
 国等の責務を明らかにし、
 及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、

子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。

こどもの貧困の対策を国や自治体等が推し進めるにあたって根拠となる法律ですから、とても重要な法律です。

さて、同法律は、2025年に改正を予定しています。

そういった中で以下の団体が連盟で出したのが、冒頭の提言です。

公益財団法人あすのば
認定特定非営利活動法人キッズドア
特定非営利活動法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
認定特定非営利活動法人Learning for All

提言のポイント

あすのばの代表理事によれば、ポイントは以下のとおりです。
以下、下の3つのポイントに加え、筆者の注目ポイントを記載していきます。

第1のポイントは、
このこども大綱に沿って、子どもの貧困対策推進から子どもの貧困解消に大きく舵を切っていただきたいこと

2つ目のポイントは、
こども基本法の制定にともなって、子どもの貧困対策法も改正されています。この改正で閣僚会議である子どもの貧困対策会議がなくなってしまいました。ユニバーサルな子ども支援の拡充は大切ですが、最優先すべきは困難を抱える子ども・若者支援です。子どもの貧困対策基本法に法律の名称も変えていただきたい

3つ目のポイントは、
議員立法として成立し実効性の高い法律である自殺対策基本法やがん対策基本法で明記されている内容を参考に拡充してほしい点

第1のポイント こども大綱を受けて 「対策推進」から「解消」へ

子どもの貧困対策の推進に関する法律は2013年6月に制定されました。
もう制定されてから10年を超える月日が流れています。
しかし、こどもの貧困という問題は、無くならないばかりか悪化の一途をたどっています。
そのような中で、「対策推進」というワードは悠長なのではないかと個人的にも思います。

こども大綱にも以下のとおり、こどもの貧困解消に全力をあげて取り組む、とうたわれており、政府としても見過ごせない課題と認識しています。

第2のポイント 法律の名称から変更を

以上のような状況なわけですから、いっそのこと、法律の名称を

子どもの貧困対策の推進に関する法律
から
こども貧困対策基本法
へと
変更すべきではないかと、私も考えます。

第3のポイント 自殺対策基本法等を参考にした規定の拡充

具体的には、以上のような規定(一部)をいわば輸入することを提言しています。
これらも、なぜ元々なかったのか、というような規定なのではないかと考えます。

第4 筆者の注目ポイント① 調査事項

こどもの貧困についてのデータは十分とはいえないところがあります。
こどもの貧困の解消に向けて施策を進めていくには、目標設定が重要になると思います。
そういった中では指標をどのように設定するかは重要です。
上にあるように、貧困率だけではなく、生活保護の捕捉率や不登校率といった指標について調査し、改善のための手を打ち、再度調査することでPDCAのサイクルを回していくことが求められます。
政策評価のためにも、適切な指標を設定することが求められるところ、法律に書き込んでしまうことで、必ず指標設定をするようにする試みに注目をしています。

第5 筆者の注目ポイント⑤ こどもの貧困対策会議の復活

もうひとつ注目しているのが、こども家庭庁創設の関係で消えた「こどもの貧困対策会議」の復活です。
今回のこども大綱が作成されるにあたって、本当にたくさんの会議体が議論をしました。
しかし、こどもの貧困という、後世に残しがたい課題について、中心的に取り扱う会議体はありませんでした。
会議体がないということは、専門家の関与の機会が乏しいということでもあります。
このことが、こども大綱の中では具体的な取り組みに関し、今一つ踏み込んでいない内容になってしまった一因なのではないかと思います。
こういった手続き上の問題点は、一刻も早く解消されるべきですので、子供の貧困対策会議(本当は、「対策」ではなく「解消」がいいのでしょうが)の復活が待たれます。

以上です。
長い投稿をお読みいただき、ありがとうございました。

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