公正な貿易がもたらすものとは~フェアトレード・ラベル・ジャパン~

公正な貿易がもたらすものとは~フェアトレード・ラベル・ジャパン~

こんにちは。インテアス法律事務所の代表の樽本哲です。今月から私が役員や顧問を務める団体を紹介するコラムシリーズを始めることにしました。社会的な目的のために事業を行う団体は何を目的にどんな活動をしているのか、なぜ私たちがそれらの団体サポートしているのか。そんなことを語っていきたいと思います。

フェアトレード・ラベル・ジャパン

最初に紹介するのは、フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下、FLJ)です。同法人は東京都中央区の日本橋に事務所を置く認定NPO法人です。

樽本は2015年11月からFLJのボードメンバー(理事)を務めています。そのきっかけは、NPOのための弁護士ネットワークという任意団体の勉強会にFLJのスタッフが参加して興味を持ってくれたことでした。

FLJは、Fairtrade International(※1)の構成メンバーとして、日本国内における国際フェアトレード認証ラベルのライセンス事業、製品認証事業及びフェアトレードの教育啓発活動を主に行っています。FLJは、2023年に設立30周年を迎えました。

※1) 国際フェアトレードラベル機構 Fairtrade International
1997年に設立されたFairtrade Internationalは、28の会員組織 (3 つの生産者ネットワークと 25 の国別のフェアトレード組織) からなる非営利のマルチステークホルダー協会で、ドイツのボンに本部があります。

フェアトレードの仕組み

フェアトレードとは、コーヒー・カカオ・バナナ・コットン・砂糖などの一次産品を適正な価格で取引することで、途上国の生産者の生活を向上させる貿易の仕組みです。

国際フェアトレードラベル機構が定める国際フェアトレード基準には、経済・環境・社会(人権)の3つの要素がバランスよく組み込まれています。それぞれ、適正価格の保証・プレミアムの支払、環境に配慮した生産方法、児童労働の禁止などがあります。

SDGsやビジネスと人権という言葉が生まれるずっと前から、フェアトレードは存在しています。

2022年のフェアトレード・プレミアム(取引における適正価格に上乗せさせる形で途上国の生産者組合に支払われる生産者の生活向上や品質向上のための支援金)の金額は総額で2億2,300万ユーロ近くに達しています(前年比10%増)。

データ出典:Fairtrade Premium reached record high of €222.8 million(8 May 2024)

スーパーやコンビニ、小売店などで、この国際フェアトレード認証ラベルが付された商品を見たことがあるという人は多いのではないでしょうか。

国際フェアトレードラベル

実は日本は、強制労働や児童労働によって生産された商品を年間5兆円も輸入していると言われています(2018年の調査データ)。このラベルが付された商品を購入するだけで、私たちは強制労働や児童労働に加担することなく消費生活を送ることができ、なおかつ途上国の生産者の生活向上にも貢献することができます。

日本におけるフェアトレードの市場規模

私がFLJの理事になった2015年当時、日本のフェアトレード推定市場規模は100億円でした。それが2023年には211億円にまで成長しています。

市場拡大の背景には、直近の政府・産業界におけるサプライチェーン上の人権への配慮を求める動きが急速に活発化している事情があります。開発途上国の原料生産地は人権リスクが高い傾向があるとされ、そのリスクに取り組むための数少ないツールとして国際フェアトレード認証への産業界の注目が高まっています。

私がフェアトレードに参加する3つの理由

弁護士がなぜフェアトレードを応援するの?と聞かれることがありますが、理由はシンプルです。

まず、フェアトレードは貿易の仕組みでありながら生産者の人権擁護に深く関わっているため、FLJの活動を通じて日本でフェアトレードが広まれば、弁護士の使命(弁護士法3条)である「人権擁護と社会的正義の実現」に貢献できます。

次に、FLJの活動には、国際フェアトレード認証ラベルのライセンス契約のレビューなど弁護士としてのスキルや経験を役立てることができ、プロボノとして普段の仕事では得られない知見が得られます。やりがいを感じることも多いです。

最後に、FLJの活動を通じてつながった人たちがみな生き生きしていて魅力的なので、参加していて楽しいという理由もあります。実はこれが一番大きな参加の理由かもしれません。

FLJと関わるようになってから、職場で購入するコーヒーの多くはフェアトレードになりましたし、贈答品としてフェアトレードのアイスクリームやチョコレートを贈っています。

毎年5月はフェアトレード月間

毎年5月は、フェアトレードに関係するさまざまな団体がフェアトレードの普及啓発のためのキャンペーンに取り組んでいます。

FLJも、ライセンシーである企業や自治体・教育機関などと協働して、フェアトレードミリオンアクションキャンペーン(※2)を実施しています。ご関心を持たれた方は、是非商品購入やSNS投稿でご参加ください。

※2 フェアトレードミリオンアクションキャンペーン

フェアトレード月間である5月の1か月間に「商品購入」や「SNS投稿」、「イベント参加」などでフェアトレードに関するアクションの実施を呼びかける、国内最大級のフェアトレードキャンペーン。キャンペーン期間中に、日本全国でフェアトレードに関するアクションを行うと、1アクションにつき1円が途上国の生産者への寄付になる。
4年目となる今年はイオン株式会社、エスビー食品株式会社、小川珈琲株式会社、UCCジャパン株式会社などの大手企業をはじめ、国内の小売店・食品メーカー・飲食店・商社・自治体・教育機関など167社・団体と協働で開催される。

インテアス法律事務所もこのキャンペーンに賛同しています。5月中に当事務所に打ち合わせに来て、フェアトレードのコーヒー・お茶を飲んでいただくだけで、誰でもこのキャンペーンに参加することができます。皆様のご来訪をお待ちしています。

さいごに

フェアトレードは社会的に善いことだから選択する、でも品質はそこそこ。そんなイメージがあるかもしれません。しかし、それは誤解です。道徳的に正しいというだけでは誰も大事なお金と時間を使ってはくれません。

品質がいい、おいしい、楽しい、デザインが素敵……そんなポジティブな感情を呼び起こしているからこそ、フェアトレードの市場は成長しているのだと思います。

このコラムをきっかけにフェアトレードの仲間が増えてくれるとうれしいです。

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