同性婚訴訟、名古屋高裁違憲判決から考える

同性婚訴訟、名古屋高裁違憲判決から考える

2025.03.18

 一連の同性婚訴訟では、現行の法律が法律婚のみを定めていることについて、「法の下の平等」を保障した憲法14条、「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項、「個人の尊厳」を掲げた同条2項などに違反するかが争われています。

 令和7年3月7日に出された名古屋高裁の判決でも、14条違反と24条2項違反が認定されており、これまで各所で提起されてきた同性婚訴訟の地裁判決、高裁判決による司法判断の流れが固まってきたと言えます。
 ただし、名古屋高裁判決でも同性婚の必要性が具体的に認識されるようになったのは比較的最近のことであるとし、国会が法律を見直していない対応自体に国家賠償法上の違法性までは認めていません。
つまり、現行の法律が違憲であるとの判断はされているものの、これに対してどのような立法をしていくかは国会の判断に委ねられています。

 ところでみなさんは、2年前の令和5年10月に性別変更の法律上の要件が争われ、憲法違反が認められた判決を覚えていますでしょうか。
 これは、性別変更の法律上の要件の一部が違憲とされたものであり、代わりの要件を検討すればよいため法律変更についての国会での検討範囲はさほど広くないと言えます。
 しかしこれについては、令和6年の6月に自民党の性的マイノリティに関する特命委員会が新たな要件をまとめ各党が見解を表明して以来、あまり活発に議論がされていないようです。
少なくとも違憲判決から約1年6か月が経過した現在でも法改正はできていません。喉元を過ぎてしまったのでしょうか。

 選択的夫婦別姓の議論でも、「国民的議論」が尽くされていないというもっともらしい理由を自民党議員が述べることがあります。
 しかし、「国民的議論」を国会議員がしっかりとリードして進めなければ、いつまでも違憲状態は解消されないままです。

 本年3月7日の同性婚訴訟における名古屋高裁判決は、この点に関し以下のように言及しています。
 パートナーシップ制度を設けても「同性カップルが法律婚制度を利用できないことによる不利益は解消、軽減されているとはいえない」。
同性婚の法制化は戸籍制度の重大な変更をもたらさず「膨大な立法作業が必要になるとはいえない」と。
 裁判所も違憲判決が立法につながらない現状を危惧しているようです。
 人権侵害を認めた違憲判決が放置される社会は、人権の尊重を柱とする近代立憲主義国とはいえません。
中国やロシアと比べて日本は先進的だと思っている方は多いですが、そうも言えない状況があると私は考えています。

 最近テレビを見ていたところ、アルバイト求人、一般的な転職、特定の業種の転職のアプリやサービスのCMが多く流れているのを目にしました。

 旧来の日本型雇用では終身雇用制度があり、企業間で労働力が移転するという労働力の外的流動性は低く、その代わり転勤や異動を社内で活発に行う内的流動性が高いとされてきました。
 現在では終身雇用制度が当たり前ではなくなり、労働力の外的流動性が高まってきた、あるいは、高められるべきだという流れがあります。

 そういった意味では、積極的な転職を支援するアプリやサービスは時代を象徴しているようにも思えます。
 しかし、私は若干の危惧を感じています。
というのは、アプリやサービスもただではないということです。
そこにはサービスを提供するプラットフォーマーが存在し、プラットフォーマーが利益を得る構図があります。
 労働基準法第6条で中間搾取の禁止の考え方からすると、労働力を仲介することで利益を得るのは好ましくないことになります。(この考え方も、労働者派遣法の範囲拡大で随分と価値が薄められてはいますが。)
 もちろん転職に関するアプリやサービスも現行法に反しない形で行われているので適法ではありますが、プラットフォーマーも実質的には労働力の仲介で利益を得ていると言え、あまりにプラットフォーマーが儲かる構造になるのは健全な労働市場ではないように思います。

 例えば、アプリを使ってバイトを探したい企業からすると効率よく人材を探せますが、一方で、手数料をプラットフォーマーに支払うことになります。
そうすると、企業としては、当該労働者に対する賃金をあまり上げられないということにもつながりかねません。
 便利なサービスを否定するつもりはありませんが、プラットフォーマーがあまりに膨張するのは社会としてバランスを失するような気がするのです。

 労働力の流動性を挙げること、賃金を上げることは、現在の雇用システムからの変更を意味しているため容易ではありませんが、できるかぎり労働者に強い負荷をかけない形で実現すべきだと思ったりします。

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