夫婦が同時に育休をとると上の子が退園させられる問題について

夫婦が同時に育休をとると上の子が退園させられる問題について

Yahooニュースで取り上げられましたね。
育休取得を促進しているはずなのに、「それじゃあ」といって取得すると起きる「上のこどもが退園させられる」という大きすぎる不利益が生じる自治体がある問題、これは一刻も早く解決されるべきだと思います

この話の背景として、保育園はあくまで保護者の労働等が原因で「家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの」、言い換えると保育の必要性がある人のためのサービスなんですよね
そして、育児休業については、当該育児休業の間に当該特定教育・保育施設等を引き続き利用することが必要であると認められるんだったら、保育の必要性があることになっています。

(支給要件)

第十九条 子どものための教育・保育給付は、次に掲げる小学校就学前子どもの保護者に対し、その小学校就学前子どもの第二十七条第一項に規定する特定教育・保育、第二十八条第一項第二号に規定する特別利用保育、同項第三号に規定する特別利用教育、第二十九条第一項に規定する特定地域型保育又は第三十条第一項第四号に規定する特例保育の利用について行う。 満三歳以上の小学校就学前子ども(次号に掲げる小学校就学前子どもに該当するものを除く。) 満三歳以上の小学校就学前子どもであって、保護者の労働又は疾病その他の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの 満三歳未満の小学校就学前子どもであって、前号の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=424AC0000000065

子ども・子育て支援法

(法第十九条第一項第二号の内閣府令で定める事由)

第一条の五 法第十九条第一項第二号の内閣府令で定める事由は、小学校就学前子どもの保護者のいずれもが次の各号のいずれかに該当することとする。
一~八(略)
 育児休業をする場合であって、当該保護者の当該育児休業に係る子ども以外の小学校就学前子どもが特定教育・保育施設、特定地域型保育事業又は特定子ども・子育て支援施設等(以下この号において「特定教育・保育施設等」という。)を利用しており、当該育児休業の間に当該特定教育・保育施設等を引き続き利用することが必要であると認められること。

 前各号に掲げるもののほか、前各号に類するものとして市町村が認める事由に該当すること。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426M60000002044

子ども・子育て支援法施行規則

そして、「家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの」かどうかは、市町村がその地域の実情等を考えつつ、認定してくれる仕組みになっています。

(市町村の認定等)

第二十条 前条各号に掲げる小学校就学前子どもの保護者は、子どものための教育・保育給付を受けようとするときは、内閣府令で定めるところにより、市町村に対し、その小学校就学前子どもごとに、子どものための教育・保育給付を受ける資格を有すること及びその該当する同条各号に掲げる小学校就学前子どもの区分についての認定を申請し、その認定を受けなければならない。

 前項の認定は、小学校就学前子どもの保護者の居住地の市町村が行うものとする。ただし、小学校就学前子どもの保護者が居住地を有しないとき、又は明らかでないときは、その小学校就学前子どもの保護者の現在地の市町村が行うものとする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=424AC0000000065

子ども・子育て支援法

その結果、記事になった福岡県春日市のように夫婦が共に育休を取得した場合には、その産まれたばかりのこどもではなく、その上の兄弟について保育の必要性を欠くとして、退園を求められるといった事態が生じるわけです。

育休取得を推進しつつ、それに応じると、こどもが所属していたコミュニティーから排除されてしまう
これってこども基本法の基本理念からしてもどうなんだろうと思います。

(基本理念)

第三条 こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。 こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=504AC1000000077_20230401_000000000000000

こども基本法

つい先日(令和5年3月31日)、「こども・子育て政策の強化について(試案) - 次元の異なる少子化対策の実現に向けて -」が公表されました。
以下のファイルは、https://www.cfa.go.jp/policies/81755c56-2756-427b-a0a6-919a8ef07fb5/  から取得できます。

ここには、以下のような記載があります。

(3)全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充~「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設~
〇 0-2歳児の約6割を占める未就園児を含め、子育て世帯の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えており、支援の強化を求める意見があることから、全てのこどもの育ちを応援し、全ての子育て家庭への支援を強化するため、現行の幼児教育・保育給付に加え、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付の創設を検討する。当面は、未就園児のモデル事業の拡充を行いつつ、基盤整備を進める

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/81755c56-2756-427b-a0a6-919a8ef07fb5/545f9b03/20230402_policies_%E3%81%9F%E3%81%9F%E3%81%8D%E5%8F%B0%EF%BC%88%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%E7%89%88%EF%BC%89.pdf

こども家庭庁HP

社会で子育てをしていくという方向性、とても素晴らしいと思っています。
そうであるならば、夫婦揃って育休を取得した場合に、上の子が保育園からはじき出されるようなことのないよう、進めて欲しいなと心から思います。

なお、ここまでは夫婦ともに育休を取得した場合の話をしてきましたが、片方でも保育園に通えなくなってしまうという更によく分からないことが起こっており、これもこれで早急に改善されるべきです。
この点については、「保育園を考える親の会」がずっと活動されてきており、先日も同会の作成した記事が公開されています。

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