弁護士がMBAで学ぶ理由
2024.01.16
こんにちは。インテアス法律事務所の樽本です。私は2022年8月から大学院大学至善館イノベーション経営学術院で2年間の経営学修士(MBA)のコースを履修しています。
至善館について
至善館は20年以上の経営者リーダー教育の実績を有するISLというNPO法人が母体となり、6年前に日本橋で開学した新しい大学院です。できてからの歴史が浅いため、国内でもあまり知られていませんが、母体であるISLは、富士通、リクルート、コクヨなどの大企業やソーシャルセクターの経営者リーダーを数多く輩出しています。至善館の現役学生の大部分は企業派遣のミドルマネジメント層ですが、JICAのような独立行政法人やNPOの職員のほか、中小企業の経営者、大学の教員や会計士もいます。外国人比率は2~3割で、士業は私以外に英語クラスに会計士がひとりいるだけです。
ひとつは、人生100年時代を迎えて、今後も弁護士として、また経営者として第一線で働き続けるために、40代のうちに頭のなかのOSをアップデートできるような本気の学びの機会を持ちたいと考えたからです。
至善館の教育カリキュラムは独自性が強く、一般のビジネススクールとは一線を画しています。最大の特徴はリベラル・アーツ教育です。ファイナンスやマーケティング、企業論、ビジネスモデルなどのビジネス科目と並行して、1年次の前半に宗教、哲学、科学の歴史と将来展望を学び、後半では、演劇、社会学、東洋思想を学びます。リベラル・アーツを学ぶ意味は、人間存在とは何か、資本主義とは何か、社会はどうあるべきかといった根源的な問いについての考えの基軸(価値観)を自分の中に作り上げることです。2年間を通じて、リベラル・アーツ科目とビジネス科目以外にも、日本文化、システム思考、デザイン思考、アート思考、コミュニケーション、瞑想、座禅など様々な授業を通じて、全人格経営リーダーとしての資質を磨いていきます。
この図は至善館がコースのガイダンスの際に学生配布しているスライドの一部です。プログラムの全体像もこのように明確にデザインされています
至善館の教育の優れている点は、これらのカリキュラムが明確な意図のもとに統合され、ファカルティ陣の強い横連携のもとに学生に提供されていることと、内省の機会を非常に多く設けていることです。
Shizenkan Difference「変革と創造に挑む 全人格経営リーダーを 輩出する」
もうひとつの理由は、自分が理事や社外役員として関わっているNPOやスタートアップに対して、経営的な視点でより多くの貢献をしたいと考えたからです。たかが2年大学院で学んだくらいでビジネスや経営ができるようになるとは思いませんが、経営者の果たすべき役割は何か、イノベーションやインパクトをどうやって創出するか、人と組織にどのように力を発揮してもらうかといったことを、理論やケースを元に考え抜いた経験は、当事務所の顧客である経営者にとっても価値があると考えています。法律や課題解決といった弁護士の本来の役割を越えて顧客に貢献したいと考えるに至ったのには、もう少し深い悩みや課題感がありますが、それについてもまた別の機会にお話しできればと思います。
至善館に興味を持たれた方がいたら、ファカルティ陣によるイベントや単科履修科目もありますので、まずは体験してみるとよいでしょう。私のように士業でありながらMBAに興味があるという方にも自信をもってお勧めします。個人的な思いとして、企業やNPOの仕事をする弁護士は、経営を学ぶことで、顧客に貢献ができるだけでなく、自らも経営リーダーとして活躍し、社会により大きなインパクトを与えることができると考えています。同じ志を有する仲間がいたら、ぜひご質問やご相談をお寄せください。最後までお読みくださり、ありがとうございました。